二次試験の「機械・制御」では機械に論説問題が出題されています。近年ではほとんどが計算問題なので先ずはこれを確実に取ることが合格への近道ですが、論説問題も解答できれば合格はゆるぎないものとなります。
本書は、初めて電験2種を受験する方を対象に、計算編の続編として執筆いたしました。機械・制御の論説問題に関する学習ガイドとなり、本書で学ぶことで自然に第2種合格の実力が養成されることを目指しました。
改訂版発行に際しては次の点を考慮しました。
平成7年の試験制度変更後、自動制御やパワーエレクトロニクスはほぼ毎年出題されています。パワーエレクトロニクスのうち、直流チョッパ、インバータは、計算問題もありますが、論説編での動作原理等の解説が重要なので、これらは論説編で計算問題も含めて解説しています。これまでの論説編では割愛していた三相インバータ、サイクロコンバータを追加しました。
演習問題についてはできるだけ近年の出題にしました。ただ、自動制御もパワーエレクトロニクスも計算問題が出題されて論説問題はほとんどありませんが、この論説編では計算問題を解く上でも役に立つ解説がありますので、一とおり学習されることをお勧めします。
一部用語を変更したものがあります。最近の電気工学関係では、正弦波交流のように回転ベクトルであって大きさと位相という二つの量によって定まるものをフェーザと呼んでおり、本書においてもフェーザで統一しました。角変位は位相変位としました。
本書の内容については次の点に特に留意しました。
(1)機械・制御の科目の中で特に「機械」に重点を置きました。機械の中ではパワーエレクトロニクスにウェートが高めてあります。近年の技術進歩は著しく、特にパワーエレクトロニクスの発展は目覚しいものがあり、機械のいろいろな分野に使われるようになってきています。最近の技術を知っておくことは重要と考えました。
(2)従来の機械分野についても基本的な事項は重要と考えており、これらを確実に理解できるようにしました。
(3)体に図を多く取り入れて理解しやすいようにし、できるだけ丁寧に説明を加えました。
(4)各単元の中にできるだけ過去の試験問題を取り入れました。これにより、どのような問題が出題され、それをどれくらい解けるのかにより自分の実力を自己診断できるようにしました。
以上の内容を踏まえ、本書は次の5項から構成されています。
【要点】
学習項目の重要事項を要点としてまとめてあるので、学習の重要事項が短時間に把握できます。また、特にパワーエレクトロニクスについては詳しい説明を加えてあります。
【基本例題にチャレンジ】
基本例題は、学習項目に直結する基本的な問題を要点に挙げた重要事項を直接使って解くことにより、基礎力を養成する内容にしました。
【応用問題にチャレンジ】
要点の理解をさらに深めるために、第2種二次試験と同水準の問題を挙げ、応用力を養成する内容にしました。
【ここが重要】
要点を補足するものでその項目でさらに付け加えたいことを挙げました。
【演習問題】
過去に第2種の試験で出題された問題を中心に、学習項目の実力確認の演習問題としてまとめました。特に必要でないと思われる場合は割愛してあります。
第1章 電気機器一般
1.1 回転電気機械の損失
1.2 回転電気機械の振動と騒音
1.3 電気機器の冷却方式
第2章 変圧器
2.1 変圧器の冷却方式
2.2 変圧器の絶縁媒体
2.3 変圧器の呼吸作用と油の絶縁劣化防止対策
2.4 変圧器の機械的保護リレー
2.5 変圧器の騒音の原因と低減対策
2.6 変圧器の結線
2.7 変圧器の励磁電流
2.8 変圧器の定格周波数とは異なる周波数での運転
2.9 変圧器の試験法
2.10 単巻変圧器
第3章 誘導機
3.1 三相誘導電動機の始動方法
3.2 三相誘導電動機の速度制御方法
3.3 三相誘導電動機の制動方法
3.4 単相誘導電動機の始動方法
3.5 三相誘導電動機の定格周波数とは異なる周波数での運転
3.6 三相誘導電動機の不平衡電圧の下での運転
3.7 誘導発電機の概要と同期発電機との比較
第4章 同期機
4.1 同期機の電機子反作用
4.2 同期発電機の短絡比
4.3 同期発電機の自己励磁現象
4.4 同期発電機の励磁方式
4.5 同期電動機の始動方法
4.6 同期発電機の安定度と安定度向上対策
4.7 水車発電機とタービン発電機の相違点
4.8 大容量タービン発電機の冷却方式
第5章 直流機
5.1 直流機の電機子反作用
5.2 直流機の整流作用
5.3 直流電動機の速度制御方法
5.4 直流電動機の制動方法
第6章 パワーエレクトロニクス
6.1 整流回路(抵抗負荷)
6.2 整流回路(誘導負荷)
6.3 直流チョッパ
6.4 交流電圧制御とサイクロコンバータ
6.5 インバータ
6.6 半導体電力変換装置の直流電動機制御への適用
6.7 半導体電力変換装置の誘導電動機制御への適用
6.8 半導体電力変換装置が電力系統に与える影響とその対策
6.9 アクティブフィルタを使用した高調波対策
第7章 自動制御
7.1 オン・オフ制御とPID制御
7.2 フィードバック制御の効果
7.3 フィードバック制御系の安定判別