大学工学系学部、工業高専における熱力学、特に工業熱力学は、機械工学分野における基盤科目で、俗にいう4力学(材料力学・機械力学・流体力学・熱力学)のひとつです。
工業熱力学では、巨視的立場から状態変化、エネルギー保存則、エントロピ、熱機関のサイクルなどについて学ぶことが中心となっていました。一方で最近のマイクロ・ナノ技術の進展とともに、いわば物理学としての熱力学の重要性が高まっており、工業熱力学から統計熱力学へシフトしつつあるようにも思えます。
多くの工業熱力学の教科書では、状態変化、第1法則、第2法則、熱機関のリサイクルといった、いわば大項目別に章立てがなされているのが通例であるが、本演習では第2章において、熱力学の基礎的問題を扱い、第3章でカルノーサイクルから始まる熱機関のサイクルの問題を集めました。
各小項目の節においてはまず例題を示し、それを通じて基本的な説明を行い、その後演習問題を解くように配置しています。
序
本演習で使用する主な記号
本演習で常用する物理量
ギリシャ文字の読み方
第1章 演習問題を解くにあたっての基礎的事項
単位《SI 単位と組立単位、接頭語、単位換算》
数学的基礎《指数、対数およびグラフ、微分、積分概念と幾何学的意味、確率、統計》
物理的基礎《力のつり合い、作用反作用、運動量変化と力積、力学的エネルギーの保存、仕事》
有効数字の考え方
第2章 熱力学の基礎
大気圧、静水圧
気体の状態変化《ボイルの法則、シャルルの法則、理想気体の状態方程式、浮力》
気体分子運動論と内部エネルギー、圧力
確率、統計とエントロピ概念
エネルギー、エネルギー保存
比熱《定容比熱、定圧比熱、熱平衡》
熱力学第1法則《気体の状態変化と仕事と熱》
熱力学第2法則《エントロピ、等エントロピ変化、可逆と非可逆の考え方》
ポリトロープ変化
エンタルピ、等エンタルピ変化
高速気流・臨界流,音速
実在気体の特性《ファン・デル・ワールス式》
蒸気の性質《等エンタルピ変化、等エントロピ変化、非可逆性》
燃焼《燃料と成分、発熱量、断熱燃焼温度》
第3章 熱機関のサイクル
熱機関概説
カルノーサイクル《原動機と冷凍機、カルノーサイクルとエントロピ》
非可逆性のある熱機関のサイクル
エクセルギの導入
等容サイクルとガソリンエンジン
等圧サイクルとディーゼルエンジン
ブレイトンサイクルとガスタービン・ジェットエンジン
ランキンサイクル《飽和蒸気・過熱蒸気ランキンサイクル、効率改善》
演習問題の解答
付録
各種気体の熱物性値
各種気体の臨界値
常圧(101.325kPa)における各種気体の物性値
各種流体の飽和物性
水の飽和蒸気表(温度基準)
水の飽和蒸気表(圧力基準)
圧縮水および過熱蒸気の熱力学的性質